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旅の写真日記

+ ダラットのくじ売り少女(全3頁)

旅の写真日記
ダラットのくじ売り少女 (2)

アンちゃんはタインホアという北部の田舎町から、家族でダラットに移ってきた。13人兄弟の末っ子で、家はこのカフェの近くだそうだ。
「ダラットは好き?」と僕は尋ねた。
「景色は好き。でも田舎の方がたくさん親戚がいるから好き。あなたは家族と暮らしてるの?」
「ひとりだよ」
「えーっ! 寂しいでしょ。私は耐えられない。1ヶ月が限度だな。家族と1日会えないだけでも寂しくて仕方ないもん」
「お父さんとお母さん、好きなんだね」と言うと、「うん!」と強く答えた。

しばらく話すと、僕のベトナム語がついていかなくなり、会話が途切れた。
アンちゃんは、店内に流れている女性歌手の歌に合わせて歌い始めた。
「アンちゃんは将来何になりたい?」
「お医者さん」
「ベトナムでお医者さんになるのはむずかしい?」
「そんなの知らないよ。でもね、人を診てあげるの楽しいと思う」と言い、医者になったらどんなことがしたいか、身ぶり手ぶりをつけて一息に話してくれた。アンちゃんの顔中から喜びがあふれ出ていた。細かいベトナム語はわからなくても、その顔を見眺めているだけでこっちもうれしくなる。
語り終えると、アンちゃんはまた歌を歌い始めた。
「アンちゃん、歌手になりなよ」
「うわー、だめだよ私は」
「好きな歌手は誰?」と尋ねると、ニコニコしながら好きな歌手のことをたっぷりと聞かせてくれた。
アンちゃんは、朝6時に起きて夜12時に寝るまで、休憩を挟みながらだけどほとんどくじを売り歩いている。学校に行かせてあげたら、きっといいお医者さんになれるのになあ。

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