TOPページ へ

旅の写真日記

+ ウルムチの静かな夜に(全3頁)

旅の写真日記
ウルムチの静かな夜に (1)

中国最大の行政区、新彊(しんきょう)ウイグル自治区。
その省都ウルムチまで、北京からひたすら西へ、特急列車で48時間。
中国の国内移動とはいえ、これだけ端から端まで移動すれば、さすがに景色も人もガラリと変わる。

ウルムチへ向かう列車の車窓には、カラリと乾いた風景が続く。もっとぐっと西下して行けばタクラマカン砂漠にぶち当たるのだ。
背の高い木は少なく、低木が水辺に群生している。
だだっ広い平原を横切る河は、流れているというより、むしろじっと佇んでいるように見える。土を乾かして積み上げた平屋の家。モスクの形をしたお墓。新彊はイスラムの香りが強い。
人の様子も北京とはずいぶん違う。バスに乗っても、中国人お約束「ヤイヤイ! ケンケン!」の怒鳴り合いが始まらない。ゴミをむやみに散らかさない。知らない外国人がカメラを向けてもわめき散らさない。鉄道駅の乗車券売り場では、ちゃんと列を作る人が多い。

ウルムチに着き、市内バスを適当に乗り継いで目についた宿に泊まった。1泊15元(=約750円)の4人部屋ドミトリー。宿の建物はやたらデカイが、中はやたら薄暗かった。
初日、ぶらぶらと街を歩き回った。ウルムチの町はでかい。乾燥地帯のオアシスとは言え、高層ビルや交通渋滞は当たり前。よくもまあ、こんな所にこんな大きな町を作ったなぁと思う。
午後8時を過ぎても、外にはまだ明るさが残っていた。
午後9時頃、宿の隣りの中華レストランで、抜群にうまい「西紅柿炒蚕」というトマトと卵の炒めものをつまみながらビールを飲んだ。ビールは冷えていない。氷を頼んでみるが、「用意してない」とのことで、仕方なく生ぬるいビールをグイっとやる。外はようやく夜の帳が降りてきていた。

そのうちに雨が降り出した。
昼間の陽気が嘘のように、気温はぐっと下がってきた。半袖半ズボンなのは僕ぐらいだ。
ガラス張りの店内から、雨に濡れるウルムチの街をぼんやり眺めながら、2本目のビールを飲んだ。心地よい酔いが回ってくる。
外の景色に目を向けてはいるが、頭の中にはいろんな気がかり、考えごとが浮かんでくる。
こんな異国の地で気を揉んでても始まらないなぁ、旅の間は全部忘れていよう、と思うが、やはり実際そう簡単にはいかないものだ。
日本にいる恋人のことをぼんやりと想い、少し気分が落ち着く。

>(1) >(2)(3)

TOPページ

Copyright © 2005 Kyoren Takamasa all right reserved.