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旅の写真日記

+ MUSIC GARDEN(全3頁)

旅の写真日記
MUSIC GARDEN (1)

インドの南東海上に、セイロン島という島がある。これがスリランカ。
「涙のしずくの形の島」とあとから聞いたが、ほんとにポトリと落とした涙のようなのでおもしろい。

そのセイロン島の内陸、キャンディという可愛らしい名前の町に来た。
山間の町ハプタレから、列車で半日揺られて到着。
ここのところ雨が続いていて、気温も低い。今日も朝のうちは雨だった。
まあとにかく安宿探しだ。キャンディ駅からトゥクトゥクに乗って、キャンディ湖という人口湖のそばの安宿街へ。

小高い丘に登る道沿いに、ぽつぽつと安宿が並ぶ。
2軒目に覘いた宿で、キャンディへ来る列車で知り合ったカナダ人カップルに会った。
「Oh! キャンディ駅で探したのよ。いないから先に行っちゃったわ」
「そうだったん!? ごめん、トイレに駆け込んでた!」
カナダ人の女性は「なんだ。アハハ!」と笑いながら、僕に部屋を見るように勧めた。
部屋は広くて清潔だったが、僕の予算をはるかにオーバーしていた。
「もっと安いところはない?」と宿の主人に尋ねると、「すぐ近くにある」と言って、使用人の男の子に僕をそこへ連れて行くように言ってくれた。

歩いて30秒。門をくぐって左手に見えた建物は、新しそうでなかなか立派。
「なんだ、すごいきれいじゃん」と言うと、使用人の子は「ノー、ノー」と言ってさらに奥へ進んだ。
新らし目の建物のとなりに、小さな平屋建ての建物がちょこんとあった。
白い壁はこげ茶色に変色しかけ、軒を支える柱も細々と何となく頼りない。
しかし、「あっ、ここいいな」と思った。
柱に掛かった、カラフルな蝶々の飾り物。
おんぼろの木椅子が並べたれた、ちょっとしたアウトドアスペース。
狭いけども、好きで可愛がっているのがよくわかる庭。
そして、奥の柱には「ORIENTAL MUSIC GARDEN」という文字と楽器が描かれた、楽しい掛札があった。
はい、「ビビッ!」と来ました!
まだ部屋も見てないけど、「ここに泊まるぞ」と思った。
僕はこの「ビビッ」というやつを結構大事にする。ほとんどそれで動いているようなもんだ。
人に初めて会った時、初めて立ち降りた駅で感じる街の空気、ジャケ買いしたCDの1曲目の前奏。
ビビッと来てしまえば、もうそれだけでその先ハッピーになれるからお得。勝手に描いたイメージを、あとからどれだけ裏切られても、「もーっ!」と笑って許せてしまう。
好きなものは多い方がいい。

僕が庭を見回している間、使用人の子が「おーい、おーい」と宿の中に向かって呼びかけていた。
出てきたのは、細身で軽いアフロヘアの、気の良さそうなおじちゃんだった。

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