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旅の写真日記

+ MUSIC GARDEN(全3頁)

旅の写真日記
MUSIC GARDEN (2)

アフロのおじちゃんは名前を「ラジャ(Raja)」と言った。握手で挨拶。
「お、お、おっ。へっ、部屋を、見っ、見てごらん」
どもりがちなしゃべり方をするラジャは、少し慌てたような表情でそう言った。
そして、持ってきた鍵で、さらに慌てながら部屋の扉を開けようとする。
冒険物語に出てきそうな古めかしい鍵を、これまた年季の入った木ドアに差し込んでガタガタガタガタッ。しかし、なかなか開かない。
汗を流しながら「おっ、おかしいな、おかしいな」とさらに慌てているラジャ。その姿にも「ビビッ!」。

部屋には大きなダブルベッドがひとつと、クローゼット、小さなテーブル、扇風機があった。部屋を見る前から泊まる気だった僕は、「うん、OK。長居するから安くしてね」と言った。ラジャは精一杯安くしてくれた。
ここは宿というより、ラジャの家の間借りといった感じ。部屋はこの一室しかなく、隣の部屋はラジャの生活空間だ。ラジャが案内してくれたトイレとシャワーは、いろんなコツを駆使してようやく水が流れたり、止まったりした。部屋のドアを閉める時も、ふたりがかりでガタガタやって、ようやく閉まった。


翌朝、ザァザァという音で目が覚めた。
大きなベッドの中で「あぁ、今日もまた雨か。これで何日連続だよ」とぼやく。「どうせ雨なら出歩けないし…」といつまでも気持ちよく布団の中。
何時間かして、エイヤッ、と起き出した。
あいかわらず立て付けの悪い扉を開けると、なんときれいな青空! 雨音だと思っていたのは、庭の木々の葉が強い風に揺られている音だった。いやはや、自然に鈍感なこと甚だしい。

久々、ほんとに気持ちのいい天気。
さっそく溜まっていた洗濯物を洗い、庭先のロープに干す。すでにラジャのシーツやパンツが洗って干してあったので、僕のは隅っこの方に干しておいた。
洗濯を終え、庭先の椅子に座って昨日分の日記を書いていると、ラジャが紅茶を入れて持ってきてくれた。
「サンキュー」とお礼を言うと、「おっ、オーケー、オーケー」とまたどもりがちに言った。
ラジャは、干してある僕の洗濯物を見つけ、「こっちの方が日が当たるよ」と言って、ラジャのシーツを隅に寄せて、僕のTシャツをよく日の当たる所へ移してくれた。
ずらりと並んだ2人分の洗濯物が、12月の暖かい太陽をいっぱいに受けて気持ち良さそうだった。

その日の夕方、町なかで見つけたネット屋で、日本の友達に「久々に良い天気で洗濯しました!」と、これまた久々にメールを打って店へ出ると、外はどしゃぶりの大雨に変わっていた。

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