|
|
旅のはじまり
(5) アメリカ帰りのひと騒動��
サンフランシスコを経由し、関西空港へ向かう飛行機の中で、僕は内定をもらっていた会社へ入社しないことを決めた。
広島に戻ってすぐ、会社に内定辞退の電話を入れた。内定式の数日前だった。 「どういうことだ? とにかく今すぐ社へ来なさい」と言われた。4月からの新人研修を受けるつもりで、スーツの類はすべて東京に送ってしまっていたので、親父のスーツを引っ張り出して、広島市内にあるその会社へ出向いた。 人事担当の男性2人と、オフィスの一室で面会した。 僕がした話は、気持ちばかりが先行し、理にかなうような話ではなかったと思う。 しかし、僕の気持ちは決まっていた。 「そんな勝手なことは、社会では通用しないよ。どれだけ周りに迷惑をかけるかわかってるの?」。 その通りだった。 組織の一員として僕を受け入れてくれる準備を進めていた人、この会社に入りたくても入れなかった人、広島と東京を行き来する就職活動をサポートしてくれた両親……。全員に「すみません」と言うしかなかった。 「でも、これは君の人生だ。君が決めたのなら仕方ない。ここから先は私には何も言えない。がんばりなさい」 長い話し合いの最後にもらった言葉を、僕は折に触れて思い出す。 |