モノクロ写真館
monochrome photos
中国の朋友 9

日隆から成都に戻ってきた。
成都駅前の電話屋から、日隆の宿で知り合った中国人家族がくれた電話番号に電話してみた。おばちゃんが電話に出た。
「ああ、元気かい!? 成都に戻ったんだね? 何か困ったことはないかい?」
相手はほとんど中国語なので、僕は「イエス、イエス」と繰り返すのが精一杯。最後に、おばちゃんが何かを必死に言っているのだが、いまいちわからない。困った僕は、電話屋のおねえちゃんに身振りで助けを求めて受話器を渡した。おねえちゃんは僕のメモに、おばちゃんの言葉を書き留めてくれた。
「あなたの旅が愉快で安全なものになるよう祈っています」。
それを必死で伝えようとしてくれていたのだ。
その少し下に、「中国は良い所です。また是非来てください。歓迎します」ともあった。
思いがけず贈られた温かい言葉にも、そして行きずりの旅人に親身にかかずらってくれた電話屋の子の行為にも、心が温められた。その子の写真を撮らせてもらい、礼を言って別れた。
宿に戻り、メモをよく読み返してみると、二つ目の言葉の下には電話屋の子の名前が小さく添えてあった。

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